「準備は良い?コリンク!!」
「ピクシー、バトル・オン!!」

コリンクVSピクシー。
泣いても笑ってもこの一騎打ちでこの試合は終わりだ。

「コリンク、10万ボルト!!」
「リィッー!!」
「ピクシー、交わして冷凍ビーム!!」

ピクシーは10万ボルトを交わすと、冷凍ビームを放つ。

「スパークで防御!!」

コリンクの体を電撃が包み、冷凍ビームを弾く。
中々綺麗な光景だけど、そんな事いってる場合じゃあない。
…コリンクはさっきのエネコロロ戦で体力をかなり消耗している。
早めに勝負を決めないと!!

「コリンク、スパーク!!」
「リィッー!!」
「ピクシー、交わして!!」
「ピック!!」

ピクシーはコリンクの攻撃をジャンプして交わす。

「今だ!!コリンク、10万ボルト!!」

空中にいるピクシーに10万ボルトがヒットする。

「…スパークは、確実に10万ボルトを当てられる場所にピクシーを誘導するおとりだったんだね。
流石だよ、ヒカル。だからこそ、この技で勝負したい!!ピクシー、指を振る!!」

ピクシーが指をふり始める。

「コリンク、どんな技が来るか分からないよ!!気をつけよう!!」
「リン!!」
「ピクシー、行っけぇ〜!!」
「ピィー…」

ピクシーの手にエネルギーが集中して、光っている。
あの技は…気合いパンチ!!なら!!

「コリンク、おんがえしで迎え撃って!!」
「コォリィ〜!!」
「ピクシィーッ!!」

おんがえしと気合いパンチが正面衝突!!
…威力は互角か…な?


…………………
…………………
いや、若干こちらが押されてる?

「ピクシー、最大パワーで押し切って!!」
「ピクシィー!!」
「リィッ!!」

…コリンク!!
コリンクは大きく吹っ飛ばされて、壁に激突してしまい、そのまま目を回す。

「コリンク、戦闘不能!!よって勝者、ユキ選手!!」

観客から歓声が沸き起こる。

「…ありがとう、コリンク。」

僕はコリンクをモンスターボールにしまうと、ユキの方へ歩み寄る。

「良いバトルをありがとう、ユキ!!」
「…うん。」

僕は選手控室に戻る。
そこにはサトシ達とコウキの姿が…

「…残念だったな、ヒカル。」
「うん。でも、精一杯頑張ったから悔いは無いよ。」
「そっか…」

サトシはややうつむいて言う。

「ふう。なんだか疲れたから、選手宿舎に戻るよ。サトシ、ありがとう。
明日も試合あるのに応援してもらっちゃって。ハルカ達や、コウキもありがと!!」
「ああ、じゃあ、また明日な!!」
「うん!!」

僕とコウキはスタジアムを出る。

「ヒカル、さっき、ナナカマド博士から連絡があって、
今日これからシンオウに向かう船で帰らなきゃいけないんだ。」
「仕事なの?」
「うん、アラモスタウンってところで最近ダークライというポケモンが目撃された
っていう情報が入ったから、その調査にね。」

コウキはニコッと笑って、ポケモン図鑑を取り出す。

「こいつがダークライ。悪夢を見せるといわれているポケモンだよ。」

悪夢を見せるポケモンか…会いたいような会いたくないような…

「えっと、じゃあドダイトスを返さないと!!出て来て、ドダイトス!!」
「ドダアー。」
「ありがとうね、ドダイトス。おかげてちゃんと6匹で戦えたよ。」

僕はコウキにドダイトスのモンスターボールを渡し、
逆にセレビィのモンスターボールを受け取る。

「バトルした直後でヒカルもポケモン達疲れてるだろうから、
早く宿舎に帰って休んだ方がいいと思うよ。」
「うん、ありがとう。」
「それと…」

コウキの目付きが急に変わり、こちらを直視する。

「…最後の『恩返し』、君のコリンクならもっと威力が出せるはずだ。
本当は分かってるよね?」
「………………」

僕はうつむいたまま何も話せずにいた。

「ポケモントレーナーの1番大切な仕事って、ポケモンを育てることでも、
ポケモンに技なんかを指示することでもないと思うんだ。
ポケモントレーナーがまずやるべきこと、それはポケモンを信頼することじゃないか?
君はきっと、心のどこかで自分のポケモンより自分の知識の方が信頼できると
思ってるんじゃないのかい?」
「…………………」
「じゃあ、元気でね。何かあったら、いつでも電話して。」
「うん。わかった。」

コウキが手を差し延べる。僕はそのてをがっちりとつかんだ。





僕は、宿舎に戻ると、ベットに横になる。

(トレーナーはポケモンと共に戦い、成長する。そのために必要なのがポケモンに関する知識、
つまりポケモンを理解することですわ。トレーナーはまず第一にポケモン達を理解し、
ポケモン達と助け合うことが大切だとわたくしは思いますわ。)

カナズミジムに初めて挑戦した時のツツジさんの言葉が頭をよぎる。

(ポケモントレーナーの1番大切な仕事って、ポケモンを育てることでも、
ポケモンに技なんかを指示することでもないと思うんだ。
ポケモントレーナーがまずやるべきこと、それはポケモンを信頼することじゃないか?
君はきっと、心のどこかで自分のポケモンより自分の知識の方が信頼できると
思ってるんじゃないのかい?)

…あの時のコウキの言葉を否定出来ない自分がいる。
僕は握りこぶしをギュっと握りしめた。


…その時、台の上においておいたモンスターボールがカタカタと音を立てて、
中からポケモン達が自分で飛び出す。

「みんな…」
「ヒカル、お前らしくないぞ!!」
「そうそう、何事があってもマイペースなのがヒカルの長所でもあり短所でもあるんだからさ♪」
「あんまり落ち込まないで…わたし達まで暗くなるから…」

……………
……………
……………

「違う、違うんだ!!」

僕は思わず大声で怒鳴ってしまった。

「…ごめん。でも……僕が…君達のこと…信用しきれて…無いから……
今日の試合だって…君達の力を……MAXまで…引き出してあげれなかったわけだから…」

僕の頬を伝い、涙が流れる。

「僕、君達のトレーナーとして失格…」

パシン!!
乾いた音と共に僕の頬に痛みが走る。

目線を上げると目の前にいたのはエルレイドだった。

「我々は、お前を信じている。だからみんなお前について行ってるのではないか?
それなのに…!!」

痛い程の沈黙が走る。
…みんなが僕のことを信頼してくれてる。
そっか、そうだよね。

「ゴメン、みんな。僕、一からポケモントレーナーとしてやり直してみるよ。
君達が信じてくれてるんだ、僕も頑張らなきゃね!!」
「…ヒカル!!」

コリンクが僕に飛び付いてくる。
さあ、ここからが本当の戦いの始まりだな!!




ポケモンリーグサイユウ大会は、ユキやサトシを破ったトレーナー、
テツヤさんと言う人が優勝になった。

そして、僕はサイユウリーグの閉会式に出席し、今はポケモンセンターのテレビ電話で
コウキと電話中。

『そっか、ユキさんは負けちゃったのか。…ところで、ヒカルはこの後どうするの?』
「さっき、サトシと会ったんだけど、彼、故郷がカントー地方で、故郷に帰るみたい。
だから、僕もカントー地方にいってみようかな…と思って。」
「カントー地方か…ホウエンからならジョウト地方を経由してもカントーに行けるから、
ジョウトにも少し寄ってみたら?」

ジョウト地方か。
確か、エンジュシティやグリーンフィールドが有名だよね。
…もっともグリーンフィールドは女の子向きの観光地だけど。

「そうだね、せっかくだし、そうしようかな!!じゃあ、また電話するよ。」
「ああ、じゃあな。」

電話は切れて、僕は船の時間を調べようと思い、
ポケモンセンターのインターネットゾーンに向かおうと思ったのだが…

(…少なくともトレーナー協会に捜索依頼を出してる限りは帰らないし、どちらにせよ、
当分は帰らないから。伝えたいことがあるなら、大会終わった後に電話して。)

大会中の母さんとの会話が頭を過ぎる。

「……一応、電話してみるか。」

僕は改めてテレビ電話の前に立って、家の番号に電話をかける。

プルルルルル…プルルルルル…

「はい、もしも…ヒカル!!」
「大会終わったから電話かけてみたんだけど。
何か話さなきゃいけないことがあるんでしょ?」
「そうそう、ちょっと待ってね…」

母さんは何かを探すために、画面から離れたが、すぐに戻って来た。

「これなんだけど、何か分かるでしょ?」

提示されたのは、ジムバッチ。
多分、これはシンオウのかな…

「ジムバッチだよね?何でそんな物が家に?」
「…おじいちゃんの机の上に置いてあったのよ。このモンスターボールと一緒に。
実は、おじいちゃんが今行方不明なのよ…何か手掛かりが無いかと思って、
部屋に入ったんだけど…」

ぼく祖父は、決して他人が自分の部屋に入ることを許さない人間だった。
あの部屋、セキュリティは厳重だったからさ。
となれば祖父がジムバッチとモンスターボールを持っていたと考えるしか無いか。
まあ、モンスターボールやジムバッチ(確証は無いけど、ポケモントレーナーではない以上、
おそらくレプリカ)をコレクションしていたんだろう。

「とりあえず、モンスターボールを転送してみてよ。中身が空なのを確かめたいからさ。」
「分かった。」

転送マシンからモンスターボールが送られてくる。
それを持った瞬間、ボールは手から消える。

「強制的に転送された…?」

モンスターボールが転送された…
ポケモントレーナーが持っていられるポケモンの数は最大6匹。
つまり、あのモンスターボールを持った時点で、僕はポケモンを7匹所持していたことになる。
ということは、あのモンスターボールにポケモンが入っていた、ということになる…





数時間後、僕はジョウト地方アサギシティへと向かう船の中にいた。
………僕の祖父がポケモンを持っていた…
僕の故郷の、野生のポケモン嫌いを作った祖父が、ポケモントレーナーだった?
そんなこと、考えられるはずない!!

「どーしたの?ヒカル?」

肩に乗っていたコリンクが心配そうに僕の顔を覗き込んで、聞く。

「ううん、何でもないよ。」

まあ、悩んでいても仕方ない。
今、目指すのはジョウト地方。早くカントー地方に行きたいから、ポケモンリー
グには挑戦しないし、観光だけだけど…
さあ、どんな出会いが僕らを待ってるんだろう?



ホウエン地方編 〜完〜




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