控室に戻ると、コウキとユキが待っていた。

「お疲れ〜予備戦突破おめでとう。」
「ありがとう。正直最初はどうなることかと思ったけどさ。…あれ?サトシ達は?」
「うん、何だか別の試合を見るからって、ヒカルの試合が終わってすぐに別のスタジアムに行ったよ。」
「そっか。」

その時だった。
♪ピンポンパンポーン
「選手のお呼出しを申し上げます。ヒカル選手、ヒカル選手、
お電話が入っておりますので、至急受付までお越しください。」

「僕に電話?何だろ?ごめん、ちょっと行ってくるから、二人とも先に戻っててよ。」

僕はメガネをかけて、上着を羽織り、帽子を外すと、受付に向かった。

受付に着いて、ポケモン図鑑を提示すると、受話器を受け取る。

「はい、ヒカルです。」
「ヒカル!!心配したのよ!!」

あ…この声は…

「何でかけてきたの?母さん。」

そう、電話をかけてきたのは紛れも無く僕の母親である。

「何でって…あんたが突然いなくなるからでしょ!!どれだけ心配したと思ってるの!!
しかも勝手にポケモントレーナーにまでなって…」
「ポケモントレーナーが危険だっていうのは思い込み。切るよ?」
「待ちなさい!!…貴方が本当にポケモントレーナーになりたいんなら、父さんには私が話しておく。
だからせめて、ちょっとでもいいから、帰って来てよ…ね?話さなきゃいけないこともあるし。」
「さあね。少なくともトレーナー協会に捜索依頼を出してる限りは帰らないし、
どちらにせよ、当分は帰らないから。伝えたいことがあるなら、大会終わった後に電話して。じゃ。」

僕はそう言って、電話を切った。
ったく、本当にご都合主義だよなぁ…
今更、ポケモントレーナーになってもいいから、帰って来いだって。

僕はそのまま選手宿舎へ直行。
そろそろ明日からの予選の対戦カードの発表がある。
出来ればサトシやユキとは決勝で当たりたいよな…とか思いつつ。ネットで対戦
カードを見る。
よかった、二人とは違うブロックだ。
最初の対戦相手はジョウト地方アルトマーレ出身の人で、使うポケモンは、キングドラ、ギャラドス、
スターミー、カブトプスと、水が多い。後はクロバットとかもいるけど…

「どうだい?ヒカル?」

コウキがパソコンの画面を覗きこみながら聞く。

「まあ、電気タイプのコリンクは確定として…もう一匹はどうするかだよね…」

因みに、予選は2VS2のダブルバトルである。

「僕の相方なら、やっぱりエルレイドじゃない?電撃念力刀(エレクトリックサイコカッター)を使えるし…」

コリンクが言う。

「ちっちっちっ。甘いんだな、コリンク。
エレクトリックサイコカッターは相手の動きを封じている、あるいは動きが鈍いポケモンじゃないと、
外れやすいし、リスクも大きい。機敏なクロバットやキングドラに使うにはリスクが大きすぎるから…
よし、決めた!!」

翌日。
サトシやユキの試合をコウキと一緒に観戦した。
サトシは確かオレンジ諸島の特別リーグを除けば、これが3回目のリーグだから
、バトルもかなり安定して、落ち着いた勝利。
ユキはピクシーの「指を振る」で出た技で勝ち。相変わらず運に頼った戦いかたって感じ。

そして、僕の試合。
「さあ、続いてはマサゴタウンのヒカル対アルトマーレのトオルのバトルだ!!」
「バトル開始!!」

審判が旗を振ってバトルが始まる。

「行け、クロバット、キングドラ!!」
「準備は良い?コリンク、ポッチャマ!!」

相手はクロバットとキングドラ。
やはりそう来るよな!!

「コリンクは10万ボルト、ポッチャマはバブル光線をクロバットに!!」
「クロバット、エアスラッシュ、キングドラはハイドロポンプで援護!!」

それぞれの技が正面衝突し、大爆発を引き起こす。

「コリンク、続けてクロバットにスパーク!!」

スパークがクロバットにクリーンヒット!!

「クロバット、雨乞いだ!!」
「やはり…ね。」

クロバットとキングドラ、と聞いた時点で嫌な予感はしていた。
キングドラの特性は「すいすい」。
雨の時、素早さがアップするという特性だ。
クロバットに「雨乞い」をさせてその特性の発動を狙うんだろう。
だが、こちらもただ攻撃していた訳では無い!!

「…クロバット?」
「トオルさん、でしたっけ?確かに天候はポケモンの大きな味方にもなりうるし、
大きな驚異にもなりうるんですよね。だけど、それに匹敵するのがあります。状態異常です。」
「スパークを喰らって麻痺してるのか…」
「その通り。コリンクは10万ボルト、ポッチャマはバブル光線をクロバットに!!」

ドカーン!!
爆発音と共に目をぐるぐる回したクロバットが吹っ飛んでくる。

「クロバット、戦闘不能!!」
「ありがとう、クロバット。」

トオルさんはクロバットに労いの言葉をかけながら、ボールに戻す。

「…クロバットが雨乞をする前に倒されたのは予想外だな。だけど!!キングドラ、雨乞!!」
「な、何だって?」

フィールドに雨が降り出す。
…普通、天候を利用する戦い方だと、天候を変える技を持ったポケモン(この場合はクロバット)と
それを利用するポケモン(この場合はキングドラ)が役割分担をするのが一番効率的だと言われている。
その思い込みを逆に利用したのか…

「キングドラ、コリンクにハイドロポンプ!!」
「ドラーッ!!」
「コ、コリンク!!」

コリンクは吹っ飛ばされて、そのまま僕がキャッチする。

「コリンク、戦闘不能!!」




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