朝8時。コウキはヒカルの家から出発するので、ヒカルの両親がコウキを見送りに出ている。

「ご飯までご馳走になって、ありがとうございました。」
「いえいえ、何のお構いもできずに…」
「しかし…ヒカルの奴この大事な時に何処に行ったんだろうか?」
「ヒカルくんによろしくお伝えください。では。」

コウキはムクホークをモンスターボールから出すと、「そらをとぶ」で港へ向かう。
港はコウキを見送ろうという人でごった返していたので、直接船へ降りることにした。

「船長さん、ヒカルはもう来てますよね…?」
「おう、兄ちゃんの連れならとっくに乗ってるぜ。早速出発するとするか?」
「ええ、お願いします。」

船はゆっくりと港を出航した。
島がぐんぐん離れていく。

「ヒカル、そろそろ出てもいいんじゃない?」

ヒカルは船の操舵室から出てくる。

「え?どうしたの?その服?」
「今日見たいな日がいつかくるかなって思って。作ってたんだよ、自分で。」
「へぇ〜意外と器用なんだね。」
「『意外と』は余計だよ。」

二人に笑いが起こる。

「おい、兄ちゃんたち、島に着くまではしばらくあるから、ポケモンたちを遊ばせておいていいぞ。」
「ありがとうございます!!」
「ねえ…流石にセレビィ出すのはまずいよね…」
「大丈夫だよ、この船長さん、人が良いし、一言言っておけば、きっと秘密にしてくれるよ。」 「うん!!」

セレビィのことを船長さんに話すと、船長は快く秘密を守ると言ってくれた。

「それじゃあ、出てきて、コリンク、セレビィ!!」
「じゃあボクも。ドダイトス、ムクホーク!!」

モンスターボールからポケモン達が次々と現れる。

「おはよう、ヒカル♪」

コリンクが話しかける。

「おはよう…って、コリンクって日本語話せたっけ?」
「へへっ♪ボクがテレパシー通訳してるから、ポケモンの言葉が日本語で聞こえるんだよ。」

それは便利!!ポケモンと会話が出来るっていうのはトレーナーには大きなアドバンテージになる、とヒカルは思った。

…数時間後

「おい、兄ちゃん達、着いたぜ!!マサゴタウンだ。」

マサゴタウン。ここにはポケモンジムも無く、ナナカマド博士の研究所とシンジ湖へと続く道があるだけだ。
位置的にもシンオウの外れである。そのため、人通りも少なく、静かな町である。

その静かな町にある、ポケモン研究所。ナナカマド研究所だ。
ヒカルはコウキの後に着いて、ナナカマド博士の研究室に入る。

「博士〜今戻りました。」
「おお。ごくろうじゃ。ん?その後ろの子は誰じゃ?」

コウキは今までの事を話し出した。ヒカルがトレーナーになりたい事。
ヒカルの両親の事。そして、セレビィの森での経緯。

「ふむ…では初心者用ポケモンとポケモン図鑑を渡さねばならんな。」
「え?初心者用ポケモンって、ポケモンを持ってない人に渡すポケモンじゃないんですか?」

ヒカルが聞いた。

「初心者用ポケモンは初心者トレーナーが育成、バトル、ポケモンの捕獲…これをスムーズにこなすために優れているという観点から選ばれたポケモンじゃ。
だから、既にポケモンを持っていても初心者トレーナーは初心者用ポケモンを受け取る権利があるのじゃ。」
「へぇ…そうなんですか。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。」 「ではついてきたまえ。」

ナナカマド博士に別室に連れて行かれる。

「では、どれにするかな?炎タイプのヒコザル、水タイプのポッチャマ、草タイプのナエトル。」
「うーん…コリンクと相性が良さそうなポケモンがいいよね!!コリンクは電気タイプだから、地面タイプに弱い。地面タイプに強いのは草か水。ナエトルかポッチャマだな…」

ヒコザルがずっこける。

「…セレビィの事を考えると、うん、ポッチャマに決めた!!」
「初心者にしては随分と知識があるね。」
「うん。島である程度勉強したからね。」
「それならこれがポッチャマのモンスターボールじゃ。それとポケモン図鑑。ポケモン図鑑は、キミが出会ったポケモンに関しての情報を教えてくれるだろう。」
「ありがとうございます!!それじゃあ、戻って、ポッチャマ。」

ヒカルはポッチャマをモンスターボールに戻す。

「よろしくね。ポッチャマ。」
「なぁ、ヒカル。これからどうするんだ?」
「せっかくトレーナーになったんだし、他の地方のポケモンリーグに行ってみようかと思うんだ。
…シンオウだと両親の監視網に引っかかる可能性があるし。」
「そっか。頑張れよ。」
「ありがとう。」

ヒカルは二人にお礼を言うと、ナナカマド博士の研究所を後にし、港へと向かった。

「ちょうどいい。船が出るみたいだ。行き先は…ホウエン地方トウカシティか!!よし、決まり!!目的地はホウエン地方だ!!」

ヒカルはモンスターボールからコリンクとポッチャマを出す。

「さあ、行こう、二人とも!!」

その後ろでヒカルのことを見つめている人がいた。

「ヒカル君を確認しました。彼はホウエン地方トウカシティに向かう模様です。」
「分かった。引き続き監視を頼む。」
「了解。」

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