12月24日。
あちこちで笑顔が飛び交うこの日に、私はライブを終えた後、特に理由も無く、ライブ会場近くのショッピングモールを歩きまわった。
母親の手に引かれる子供たちの姿が目から離れない。
あの子達にはこれから家で家族と過ごす12月24日の楽しい時間がある。朝起きたらサンタクロースからのプレゼントが枕元に置いてあるんだろう。
何も特別じゃない12月24日。
誰にでも来るはずの12月24日。
ただ、私は違った。
家に帰っても、パーティも無い。
もちろんサンタクロースも来ない。
メリークリスマスを言う相手もいない。
歩き回る私に、冷たい冬の風が吹き付ける。
そんなとき、彼はやってきた。
「ミソラちゃん、やっと見つけた」
「スバル……君?」
「ライブが終わった後、楽屋に行ったんだけど、いなかったから」
「それで探しに来てくれたんだ。フフ、ありがと!」
私はそれまでの寂しさを隠すように精一杯の笑みを浮かべたが、どこか虚しい。
微かな笑い声が冬空に吸い込まれるように消えた。
「ミソラちゃん、この後予定ある?」
「……え? いや、特に無いけど……」
「じゃあさ、良かったら僕の家に来ない? 委員長たちも入れてクリスマスパーティやるんだけど」
「クリスマスパーティ……か」
私はスバル君に聞こえないような声で呟いた。
「ん? 何か言った?」
「あ、いや、なんでもないよ。じゃあ、せっかくだしお邪魔しようかな。
……って、スバル君はパーティの準備とかあるんじゃないの?」
「それは大丈夫だよ。ロックと父さんがやってるから」
スバルはにこっと笑っていうと、いきなりハンターVGからハープの笑い声がした。
「どおしたの? ハープ」
『ミソラ、ちょっとウォーロックがクリスマスパーティの飾り付けとかしてる姿を想像してみなさいよ』
「………………」
確かに。
ロック君がクリスマスの飾り付けって……なんというか……
うん。これ以上は言わないことにしよう。ロック君の名誉の為にも……
「……ミソラちゃん、行こうか」
「うん」
私たち二人はこの冬空の下を歩き出した。
ウェーブライナーで何十分かかっただろうか、私たちはコダマタウンに到着した。
スバル君が寒いだろうからといって私にかしてくれた上着に雪がつく。
「あ、降ってきたね」
「うん、でもほら、僕の家、もうすぐそこだし」
スバル君は、玄関のチャイムを鳴らすと、中からロック君が出てきた。
『おう、スバル。遅かったな。みんなお待ちかねだぜ』
「うん、さ、ミソラちゃん」
スバル君は私を家の中へと通してくれた。
「お、ミソラちゃん!」
「やっほー、ゴンタ君、キザマロ君にルナちゃんにジャック君」
「皆さん、パーティの準備が出来ましたよ!」
キッチンから山ほど料理を運んで来たのはスバル君のお母さんとお父さん。
テーブルにごちそうが次々と運ばれてくる。
『なんだかすげぇ大騒ぎなクリスマスになっちまったな、スバル』
「いや、これはこれでまた良いと思うよ」
ね、ミソラちゃん、スバル君はとこっちを向いて笑った。
「フフ、そうだね」
普通の子供たちが過ごす12月24日は私には来ない。だけど……
「こういうクリスマスも楽しいよね!」
みんな、素敵なクリスマスをありがとう。
メリークリスマス!